柊へ。他の文芸一年にも。

ヒロインはこんな感じのイメージです。
文芸部員じゃない人にはなんのこっちゃですが、もったいないので晒します。
書いた後追記:
うーんなんつーか微妙だなぁ・・・ホント微妙。
なんつーかよく初心者が書くありがちな「間違いセリフ」を言ってるかも。読むとうひょっ!?(さむっ)と鳥肌が立つかもしれないので素人にはオススメできない。

日暮れにはまだ遠い時間帯、帰り道を二人で歩く恭介と静音。
ゆるやかな気候が特徴のこの季節、プカリと浮いた白い雲が、青い空をゆっくりと北に向かって進んでいる。
街路樹を隔てた向こう側の二車線に薄緑色の乗用車が二人を追い越して、閑静と呼ぶにふさわしい住宅街に、エンジン音の余韻を残して去っていった。
「だから言ってるだろ?もっと後先考えて行動をだなぁ・・」
うんざりとした調子でしゃべる恭介の顔は、やはりうんざりとした顔つきで、同じくうんざりとした目つきを隣を歩く静音に向けている。
「わかってるよ。でも困ってる人見ちゃったら放っておけないじゃん!」
そんなうんざりした恭介を見返す静音の視線は、少し意地を張ってるような目つきだ。
「ああその通りだ。困ってる人を助ける。それ自体は実にいいことだ。表彰してやりたいくらいにスバラシイことだ」
大仰に両手を広げて、演技がかった調子で恭介は答える。
「だがな、おまえがそおゆうことをするたびになんで俺がいつもその後始末をしなけりゃなんねーんだ!おかしいだろうが!?自分でやるなら最初から最後までキッチリケツ持ちやがれ!!」
語気を荒げて隣の静音に顔を向ける。
そして、その顔がいきなり固まった。
話しかけていたはずの静音が、気を逸らした瞬間に忽然と消えていたからだ。
そしてこの「話かけていた静音がいつのまにか消える」というシチュエーションは、過去幾度も経験しすぎてもはや習慣といってもいいほどのパターン化された現象であり、しかるにこれは恭介がさっき言っていた「いつもの後始末」につながる原因であり、
「ま・・・またかぁあああああ!!!」
と、絶叫するのもまた習慣の一つであった。
驚愕した恭介が叫び終え、やにわに周辺を見回し始める。
元来た道を振り返る。いない。
車道。いない。
向こうの歩道。いない。
前方。当然いない。
見つからない静音の姿に焦り始める恭介の頭の片隅に、一つのひっかかりが生じたのは再度後ろの道を振り返った時であった。
視界の片隅、通常ならば人がいないであろう他人の家の塀の上に、なにやら動く人影がある。
見上げる。
そこにいたのは、木に高く昇りすぎて降りられなくなって震えている子猫に手をさしのべている静音の姿だった。人の身長以上もあるブロック塀の上で。
「な・・なにやってんだおまえはぁ!!」
「わわっ!コラっ暴れちゃダメっ!!」
腕に抱えた子猫が嫌がるように身をくねらせて、静音がバランスを崩したのと恭介が叫んだのは同時だった。
「なぁああああーッ!!?」
またもや絶叫した恭介が、叫びながらも手のバックを振り捨て、三、四メートル後ろの
静音の落下地点に全力で跳ぶ。
腕に抱えた子猫を決して落とすまいと身を固めた静音を腕に受け止めようとして、(高校三年の女子生徒の体重+子猫)×ブロック塀の高さの重さが予想以上で、そのまま静音+子猫が恭介を地面に押しつぶし「ごぱぁ!」と悲鳴ともつかぬ叫びを起こさせたのはまさに一瞬の出来事だった。
腹の上に座る静音と子猫は固まったように身じろぎ動きせず、目を丸くしている。
その下で恭介は、今にも口から魂がひょっこり出てきそうなほどグロッキーな表情で、まさに今にも逝ってしまいそうな感じだった。
そんな固まる二人+一匹の側を、カブに乗ったじいさんが間抜けなエンジン音を響かせて、ゆっくりと通り過ぎていった。
「ご・・・ゴハ・・・」
最期の一息、という感じに恭介が口から空気を漏らすと、それを引き金にしたように子猫が跳ねるように静音の腕から飛び出し、一目散に路地裏に駈けていって、消えた。
それを目で追った静音は安心したように吐息を漏らし、次に尻に敷いている恭介を見て、
「・・・大丈夫?」
と、言った。そして、
「て・・・てめぇ・・・いつか絶対泣かす・・・・・」
と、恭介は震える声で答えた。