暗殺の年輪 (文春文庫)

暗殺の年輪 (文春文庫)

藤沢周平は作風的に前期と後期に分かれ、近年映画化されてるのは後期の庶民的な風情を押し出したものが多いのですが(ちなみにおみやげくん情報)、この本は前期の人間的な暗さや濁りなどの負の面を描いたもの。自分的には後期に見られる四十男の黄昏的な苦渋さも好きだったのですが、この本のような前期の藤沢周平の暗さも非常にいい。そこらにいるような普遍的な人間が持つ、心の弱さや暗さが染み入るような深さをもって伝わってきます。特に表題作の暗殺の年輪はすばらしい。直木賞もとったそうな。